人気ブログランキング |

楽しそうな二人

 誰でも経験があるだろうが、毎朝、同じ時間の電車の同じ場所に
乗っていると、いつも同じ人に会ったりする。それはバスも同じだ。
引っ越してきて、育児休暇が明けてからは、ほとんど毎日バスで
通っているのだが、毎朝乗ってくるメンバーは決まっていて、いつ
ものバス停でいつもの親子が乗ってこないと、(おや?今日はどう
したのかしら?)などと、心配までしちゃったりして。ちょっとした身
内の気分である。
 さて、そのバス、いつも私と同じバス停から、皆の目を引く二人
が必ず一緒に乗る。女性は私より少し年上。背が低くて、おかっ
ぱ、帽子をかぶってリュックを背負い、いつもスカートに靴下で、
一見、ランドセルを背負った小学生のようだ。彼女と一緒にいる
男性は20代後半だろうか。少しギョロッとした目をして、落ち着き
なく、あちらこちら見ては、時々、不思議な叫び声をあげたり、お
もむろに笑い出したりする。彼らはたぶん障害者で、学校だか職
業訓練校だか、どこか決まった所に毎日通っているらしい。いつ
も女性が彼をリードする形で、「ヨシローくん、それはダメよー。」
「ヨシローくん、こっち、おいでー。」と、まるで子供をさとすような
調子でよく面倒を見ている。ヨシローくんの方は、そんな彼女に
お構いなしで超マイペース。突然、「さびしーよー」とうるうるし
たかと思うと、バスの急ブレーキで大爆笑して止まらなくなった
り、落ち着き無くうろうろして乗客の邪魔になったり、首を激しく
ふってみたり、年は違うがまるでうちの子を見ているようである。
女性の方は彼に比べるとかなり普通だが、しゃべり方というか
発音というか、どこか不自然で、やはりどこかに障害があるの
だろうとは思うが、お姉さんのごとく、ヨシローくんのことをよく
気にかけ、のんびりと、「ヨシローくん、だめよー。だめよー。
こっちおいでー」などと繰り返し繰り返し優しい調子で言ってい
る。二人は駅前でいつも待ち合わせており、彼女の方が先に
来ている場合が多いから、姉弟ではなさそうだ。
 ヨシローくんが突然激しい動作をしたり、大声をあげたりす
ると、気の弱い私は正直こわくて、ドキドキするのだが、毎日
一緒なので最近はだいぶ慣れた。慣れてくるうちに、(この二
人は、何て幸せそうに笑うんだろう。本当に楽しそうだなー)
と感じるようになった。障害者というと同情する人も多いが、
二人には、みじめだとか不幸だとか暗い影はちっともなく、彼
らの世界は子供みたいに無邪気で楽しくて面白いようだ。
 ふと、私は妊娠したときに「羊水検査」をしようか、と悩んだ
ことを思い出す。高齢出産にさしかかっていた私は、異常児
が産まれるかもしれないリスクを考えて、「羊水検査」をしよ
うかどうか、しかし、した結果、異常児だったら堕ろすのか?
と、真剣に何日か悩んだのである。相棒とも話し合い、結局
「どんな子供でも堕ろしはしないよね。」という結論になった
ので検査はしなかった。しかし、「異常だったら出産をあき
らめる」とした場合、彼らのような障害児は産まれてくること
ができない。しかし、彼らは産まれて来て、あんな風に楽し
そうに笑っている。毎日バスに乗って、ちゃんとどこか決まっ
た場所に通って、自分の居場所を見つけている。「ヨシロー
くん、笑いすぎ!」と突っ込んでいる彼女の明るい声を聞き
ながら、(人間の幸せって、障害があるとかないとか、そん
なことじゃないんだなーあ。)と、本当に実感した。
 中学のとき、私の通っていた中学には養護学級F組という
のがあって、ダウン症の子供や知恵遅れの子供が何人か
まとまって教育を受けていた。運動会や遠足などの行事で
は、普通クラスに一人ずつそういった障害児が振り分けら
れて一緒に協力して色々なことをしたものだが、たまたま私
が一緒に行動をした子供たちは、どの子供も、(本当に障害
があるの?)と思うくらい、こちらの言うこともよく理解するし、
与えられた仕事はてきぱきするし、で、驚いたものだが、あ
の子たちは今頃どうしているだろう、と、ここにきて急に思い
出したりもする。
 うーん、色々考えると、障害の有無に関わらず、幸せって
いうのは自立することと、社会との関わりが上手くできるこ
と、自分の世界を楽しく過ごせること、なのかなーあ。
by akira_dai | 2005-08-05 21:41

AKIRAの日常、考えたこと、など。平凡です。