人気ブログランキング |

悲しい中にも

 土曜日のお通夜に行くとき、結局、息子の友達の
ママは誰も来なかったけれど、駅に行ったら、登校
班が一緒だった同志とも言えるママが誰かと待ち合
わせをしていた。やはりドキドキしていたらしく、
私に気が付くと走り寄ってきて、不安そうな表情で
「akiraちゃんも行くんだ!1人?私は、今、S君
ママと待ち合わせしてるの。誰かと一緒?」
と言う。
「あー、私はね、明日行く予定がユータが急に今日
行くっていうからついてきたものの、他のママも誰
も来ないんだったら子どもだけでも良かったかなあ、
なんて思っているところ。」
と答えながら、正直、私は体調が悪くなったときに1人
の方が気楽なので、この後、どうしたものかな、と、
ちょっと考えていた。
 S君ママが到着して、彼女たちは改札へと消えていっ
たけれど、息子と待ち合わせをしている1人の友達が全然
来ない。中1男子たちがぶつぶつ言いながら、制服のポケ
ットに手を入れてうろうろしているので、彼らに、
「次の電車は45分。その次が51分。どうするの?1本
遅らすの?それとも乗るの?誰か携帯の番号知らないの?」
とせかすと、口々に
「あいつ、おせーから置いていきます」と言う。
「後からお友達どうしでもめない?大丈夫?」
「大丈夫ですよ。全員で、”待ってたんだぜ”って言うもん
な!」
「あいつ、うぜー。もしかしてゲーセンで遊んでるんじゃ
ねーの?」
「ありそー、ありそー。他の友達と既に行っちゃった可能
性もある。」
「オレたちは45分に乗ろう!」
と言う。ちょっと前まで我が家でゲームをして喧嘩して泣
いたこともあるような小僧たちが、何かちょっと頼もしく
なっている。制服の若者にときめくわ~、、、と、いけな
いことを考えるおばちゃん。
 さて、「45分に乗る」と決断しても、そこは子供。41分
になっても、彼らは駅前でうろうろして残りの1人を待って
いる。仕方がないから、
「45分に乗るよ!間に合わないよ!」
と声をかけると、若者たちは身軽に階段を駆け上って、おば
ちゃんは息を切らして追いかけるはめに・・・勘弁してくれよ。
 ホームでは先に行ったママ2人が電車を待っていた。電車で
は少年たちと一緒にいるのも不自然なので、ママ2人と一緒に
いることにした。ここでの会話がもうおばちゃん。
「最近、私、おばちゃんって楽だと思うの」
とS君ママ。
「どうして?」と私が問うと、2人がその「実感」を語る。
盛り上がる。
「仕事で失敗して、そのときはすごーーく落ち込むんだけど
すぐに忘れちゃうの。うじうじしないの。で、次の日はまっ
たく新しい気持ちで仕事ができる」
「どうせ、失敗しても、おばちゃんだからいっか、と思うしね。」
「あと、ほら、だらしなくてもボサボサ頭でもおばちゃんだから、
と思えば、どうでもいい」
「もう、気にすること、何もないもんね!」
 私は、自分もだらしなくてボサボサだけれどそこまで達観して
いなかったので驚いた。が、感心した。笑った。お通夜の憂鬱な
気持ちもちょっと楽になった。そうか、おばちゃんって楽なんだ。
 彼女たちは亡くなった女の子と同じクラスだったからクラスの
様子をきいたら残念な答えが返ってきた。2人がそれぞれ説明
してくれる。
「不登校が多くてばらばらのクラスだから、まとめる人もいない
しお花も出さないんだよ」
「今日も、行くか行かないか悩んで、でも、そもそもお通夜の連絡
を回していいものかと躊躇して連絡をとりあってないの」
「連絡網まわしたって途中で切れちゃうよね」
「それに、電話したところで、その人が行かないつもりだったら
プレッシャーになっちゃうかなとかね。」
「だから、私は、S君ママが来るって言うから来たんだよ。」
「えーー!私は『行くかもしれない』とは言ったけれど、行くとは
断言はしてないわよ。あなたが『行く』って言うから勇気を出して
来たんだよ。」
「えーー!私だって、『行こうかな』くらいで決断してなかったん
だよ~。」
 ここで私は笑ってしまった。
「いいじゃない、こうして2人で来られたんだから。」
と。何だか、おばちゃんと言ってもかわいらしい。
「akiraちゃんは?」
「私はユータに日程を聞いて、通夜か葬儀かどちらかに行くつもり
だったんだけど、葬儀に行くつもりが突然、今日になったんで焦ったよ」
S君ママは、
「1人で行く勇気は私にはないなあ。」
と感心してくれた。そんなことを言っているうちに目的の駅に着いて、
だんだんと口数も減り、とうとう会場に着いた。
 会場に着くと先生はもちろん、知っている顔がたくさんあって、
S君ママは、私を振り返って、
「来て良かった・・・」
と小さな声で言った。涙ぐんでいた。私も頷いた。
 お焼香に並んでいたら、保育園で一緒だったママが通りかかったので
声をかけた。そこに、もう1人、保育園で一緒だったママも駆けつけて
きた。やはり、保育園メンバーは1人でやってくる。子どもは全員、
男の子だから、皆、背丈が大きくなっている。亡くなった女の子の話
の他に近況も報告しあったりしてちょっと和む。
 帰りは、行きに一緒だったママ2人とはぐれてしまったので、私は
再び、4人の少年と合流して会場を離れた。保育園のママ友が、
「ユータママが、全員、面倒見て連れてきたの?大変じゃない?!」
と驚いていたので、
「いやいや、おばちゃんが、若者に面倒を見てもらっているの。
連れて来てもらったんですよ。」
と言ったら、少年たちが、うふふと笑った。
「皆、大丈夫だった?」
ときいたら、1人が、
「本人と対面したのがきつかった」
と笑った。面白くて笑ったのではない。緊張と不安で笑っているのだ。
その後は、4人が他愛ない会話をしているので、おばちゃんはその後を
追ってひたすら歩いた。若者は歩くのが速い。おばちゃんは小走りだ。
 駅に着くと幸か不幸か電車がちょうどホームに着いたところだった。
少年たちは下りの階段を思いっきり走った。えーー!走るの?!次に
しようよ、と思うおばちゃんを、冷たく少年たちは振り切って電車に
駆け込んだ。私も必死で走って何とか階段に一番近い車両に乗り込んだ。
 電車に乗ったらホッとした。亡くなった女の子が戻ってこないことは
悲しかったけれど、少年たちの成長が嬉しかった。号泣する喪主のお母
さんの姿に涙したけれど、おばちゃんたちとの何気ない会話が嬉しかっ
た。ありがたかった。そんな不思議なひと時だった。



by akira_dai | 2016-10-17 08:56

AKIRAの日常、考えたこと、など。平凡です。