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懐メロの不思議

 こことは別に懐メロのブログを書いている。ここと
同じように気まぐれな更新で、特に、懐メロの場合は、
楽曲を聞かないと意味がないので適切な動画探しがな
かなか大変で、すぐに更新が止まってしまう。こちら
は思いつきをだらだら書いているだけなので、懐メロ
よりは遥かに気楽なのだが、私もそれほど人生経験が
あるわけではないので、また、いつ、中止してしまう
かわからない。
 って、ブログの更新が大変だ、とか、やめたい、と
いう愚痴ではなく、懐メロの話だ。懐メロは、定量的
に定義されるものではない。つまり、「10年前」と
か「20年前」とか、数字で定義されるものではない。
私の感覚では、自分が一番感受性の高かった年代に聞
いた楽曲、一番心にリアルに突き刺さった楽曲、そう
いう歌だ。だから、20年前にTRFが流行っていた
とはいってもそれほど懐かしくないし、2000年以降
はミスチルが流行ったといっても、全然、古いと思え
ない(それでも、苦し紛れに、ブログには入れてしま
うけれど)。 きっと、自分が小学生、中学生のとき、
遅くとも、高校のときに聞いたものが、懐メロなので
はないだろうか。当時の自分を思い出して、ちょっと
胸が苦しくなるような、あるいは、まったく覚えてい
なかったことをふいに思いだして寂しくなるような、
そんな楽曲。
 私は母の影響で、小5くらいからさだまさしさんの
歌を聞くようになって、母が飽きてしまってからも自
分はずっとアルバムを買っていて、何だかさださんが
家族みたいになってしまって、(そろそろ飽きたな)
と思ってからも応援するような気持でずっとアルバム
を買っていた。その他に、オフコースや、当時、少し
だけはやった五十嵐浩晃さんもよく聞いていた。さだ
まさしさんは一時期、いじめられて、ファンも隠れフ
ァンとか言われて表に出てこない時期があったように
思うけれど、オフコースは解散までコアなファンがい
て、解散後、高校になっても、聞いてる人が多かった。
 さださんにしても、オフコースにしても、あれだけ
数多ある楽曲の中で、最も(懐かしいな)と思うのは、
やはり、中学のときに聞いた歌だ。さださんに関して
言えば、最もヒットしたのはそれより少し前なのに、
ものすごくマイナーな「印象派」というアルバムの曲
を聴くと、今でもちょっと泣きたくなる。
 そのアルバムが発売されたのは、1980年だった。
中1の秋だ。私は小学校の同じクラスからその中学に
進んだ女子が1人だったので、元々仲の良かった女子
は1人もいなかったし、少し心細い気持ちで学校に通
っていたと思う。人見知りな上に、それほど目立つタ
イプでもない。小学生のときはしっかり者の女子にく
っついて面倒を見てもらう方だったので、1人ぼっち
になって、しかも、なぜか、いじめられっ子らしき女
子が周りに集まるようになって、別段、それは嫌では
なかったけれど、「いじめ」という状況や、他の小学
校の過去の経緯がよく理解できず戸惑っていた。
 そんなときに、さださんの「印象派」の中の「たず
ねびと」という歌をラジオで聞いた。アルバム発売前
だった。内容は中学生とは何も関係ない。常連が集ま
る喫茶店に、かつては常連だった女性が1人でやって
きて、自分の別れた恋人を思い出しながら、その店に
過去に集まっていたに違いない昔の若者たちの青春に
思いをはせる、という、非常に大人っぽい内容だった。
 しかし、それが、なぜか、ものすごく泣けた。当時、
オフコースの「秋の気配」も聞くようになって、よく
泣いていたけれど、「たずねびと」は「秋の気配」ほ
どメロディアスでもないし、どうして泣けるのかわか
らなかった。
 ある日、昼休みに、クラスの主要なメンバーとバレ
ーボールをして遊んでいるときに、突然、その歌が頭
の中で流れてきて、理由もなくポロリと涙がこぼれて
しまった。入学して半年しか経っていないこともあり、
一緒に遊んでいた女子たちはちょっと慌てた。
「何でもない、何も理由はない」
と説明のしようがなく、遊びの輪から外れたら、もっ
と泣けてきて、何ともいえない孤独感というか寂しさ
が襲ってきた。いじめられぎみな女の子が1人、別の
友達と一緒に寄ってきてくれて、
「akiraちゃんみたいに、突然、ホロリとする子、知
ってるよ。ねえねえ、akiraちゃんって、X組のAちゃ
んと雰囲気、似てると思わない?」
と、同じ小学校出身の友達をつかまえて笑っていた。
後で、そのAちゃんと仲良くなることになるが、当時
はAちゃんの存在も知らなかった。
 どうして、あのとき、理由もなく、ただ、その音楽
を思い出しただけで泣けたんだろう、と、今になって
思う。今、聞くと、そのときの理由のない寂しさを思
い出しはしても、泣くほど響いてこない。思春期独特
の大人になる寂しさみたいなものだったのか、小学生
時代の友達と別れてしまった心細さだったのか、理屈
では説明できない何ともいえない「悲しみ」に近い感
情だった。
 「たずねびと」に描かれている過ぎ去った青春に対
するヒロインの思いに、自分の何かがオーバーラップ
したんだろうなあ。本当は、今こそ、そのヒロインと
同じ気持ちがリアルにわかる年頃だろうに、全然、泣
けない。それも懐メロの不思議なところで、あの頃、
(大人になったら、こんなドラマがあるんだろう)
と想像していたことは、想像ほどは劇的にはならない。
さまざまな歌詞を聞きながら、別れの悲しさや、過ぎ
去る青春に思いをはせていた子どもだった私。今こそ、
あの繊細な気持ちを思い出して、音楽を聴くだけで泣
ける心境になってみたいものだと、泣きたいときもあ
る。

by akira_dai | 2016-11-14 10:13

AKIRAの日常、考えたこと、など。平凡です。

by akira_dai