その歌をきくたびに・・・

 ここにきて、何となくドリカムのベストを聞いている。
その中に収録されている「やさしいキスをして」を聞く
たびに、私は、タイミングの悪い電話を思い出す。
 忘れもしない、それは、2004年の3月28日、「やさ
しいキスをして」が主題歌だったドラマ、「砂の器」の
最終回の日だった。そして、次の日に、私は、出産準備
のために産院に入院予定で、神経がピリピリしていた。
 「砂の器」は昔の映画を知っていたし、ちょっと好き
だった中居君が主役だったので、毎週、欠かさず見てい
た。そして、その日は、それを見て気を紛らしていた面
もある。しかも、最終回である。
 いよいよ、「砂の器」のクライマックスで、村八分に
された親子が全国行脚するという感動シーン、BGMに
ドリカムの「やさしいキスをして」がフルに流れる悲し
いシーンで、一番、盛り上がっているときに、電話が鳴
った。出てみると、大学時代の親友のAだった。最悪の
タイミングである。私は冷たく、
「あ、A?何なの?」
と言い放った。久々の電話だ。数年ぶりだ。なのに、
どうして、わざわざ、今日、この時間に、最終回が一番
盛り上がっている、そして、私の神経が一番昂ぶってい
る瞬間に電話をかけてくるのだ。
Aは、
「え、いや、その・・・あの、元気?」
ととぼけたことを言った。
「元気だよ、元気。明日、出産準備だよっ!」
と不機嫌に言い返すと、
「そうそう、だからさ、そろそろだろうと思って電話
したんだよ。明日なのか。」
と彼は言った。つまり、出産間近の私を気遣って、
わざわざ電話をくれたのだ・・・いいヤツだ。
 けれど、私は、不機嫌だった。電話で話しているう
ちに、どんどんドラマは進行する。もう、終わりそう
である。
「あのね、明日なの、あ・し・た!」
「なるほど。それで、akira、ちょっと、機嫌が何か
悪いもんな。そーゆーことか!いやー、悪かったな。」
彼はたじたじだった。一刻も早く電話を切りたい私の
様子を察して、彼は慌てて、
「明日、がんばれよ。じゃーな!」
と電話を切った。
 それから2日後に出産して、ものすごく忙しくなっ
て、Aと連絡をとる暇がなくなり、その電話のお詫び
もお礼もできないまま1年が経って、育児休暇中に、
私はAの結婚式に参列することになる。スピーチで
たくさん良いことを言ってあげたから、いいかな。
 「やさしいキスをして」を聞くたびに、この電話
事件を思い出して、本当に申し訳ない、そして、あ
りがたい気持ちになる。思えば、女の子でさえ、ま
さかの前日に電話をかけてくる子はいなかった。最
悪のタイミングではあったけれども、ある意味、最
良のタイミングだったのだ。
 たった今、「やさしいキスをして」を久々に聞い
て、例のごとく、電話の会話を思い出して、(A君、
余裕のない私の親友でいてくれてありがとう)と、
ちょっと恥ずかしい気持ちで思っています。

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by akira_dai | 2016-11-20 23:30

AKIRAの日常、考えたこと、など。平凡です。