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贈る言葉

 卒業式がいよいよ近づいてきました。この
時期は受験シーズンなんだけれど、仲良しの
お友達との別れの日が近づいてくる、思春期
の子どもたちにとっては非常にナーバスな時
期です。
 現在、私は、子供の学校で広報委員という
役員なので、3月号の広報紙をまとめていま
す。中学のすべての先生の「卒業生へ贈る言
葉」を紙面にペーストして編集しているので
すが、言葉は人を表すというのでしょうか。
若い先生は元気が良くてさっぱりしているし、
年をとった先生はそれなりに苦労もいっぱい
してきたのかな、と思わせるような温かい言
葉を書いている方もいらっしゃいます。座右
の銘を一言だけ、とか、歌の歌詞をそのまま、
とか、昨年とまったく同じいい加減な一言、
とか、なかなか面白く読ませていただいてい
ます。
 私の中学のときの卒業アルバムにも先生の
言葉がいくつか載っていたように思いますが
自分の担任の先生の言葉しか覚えていません。
担任の先生は山が好きな先生で、亡くなる直
前まで登山していたそうですが、それだけに、
「自然を壊すような人間になるな」というよ
うな内容を書いていたと記憶しています。
 ところで私は基本的に警戒心が強く、人を
信用するまでに長い時間を要します。子供の
学校関係の付き合いに対してはかなりの距離
をとっていて、特に、先生という人種をあま
り信用していません。しかし、中には、先生
だからこそ、実に誠実で思いやりのある方も
いらっしゃって、色眼鏡で見ている私だから
こそ、とても感激することがあります。
 息子の小5、6の担任は非常に要領のいい女
の先生で、保護者からの評判も良く、逆に私
は、(ちょっとタヌキだなあ)という印象を
もっていました。子どもどうしの問題があっ
たときに、両者の親が悪い気分にならないよ
うな言い方を各々に別々にする、親が良い気
分になることを積極的に言う、お詫びをする
ときには徹底的に頭を下げる、そういう態度
がちょっと営業的に見えたんですね。まった
く私って意地悪なんです。
 しかし、道徳の授業参観のときに、その先
生が「選択」について述べたことがありまし
た。「人生というのは自分が選択してきた結
果なんだよ」という話だったと思います。そ
れだけならありふれた話なのだけれど、先生
は非常に具体的に少し長めに話してくれたの
でした。
「選択には、進学とか就職とか大きな選択も
あるけれど、それ以外に小さな選択が毎日あ
るんだよ。今も皆は、毎日、選択しているで
しょう。勉強をするかしないかだけでなく、
食べるもの、着るもの、見るもの、読むもの、
お友達との付き合い方、今日何をするのか、
すべてを無意識に選択しているでしょう。そ
の1つ1つが自分の将来を形づくっていくこ
とになるんだよ。無意識にやっていることも
実は重要な選択の連続で、それによってどん
な人間になるのかが決まっていくんだよ。」
と。指導要綱にあったのかな。私はこの年だ
からこそ、なるほどなーと思いました、行動
の指針のようなものでしょうか。
 さらに、卒業式を間近に控えた最後の授業
の日、先生は研修で学校に不在でした。その
前日、先生はうちの息子に、
「6時間目の授業のときに、このDVDをパ
ソコンにセットして皆で見てください」
と言って1枚のDVDを託したそうです。
 そのDVDには、5年、6年のときの思い
出の写真や動画がいっぱいつまっていました。
運動会、遠足、林間学校や修学旅行、さらに
調理実習やサッカー体験、百人一首大会など、
普段の授業の様子も記録されていて、子供た
ちはビデオの中で生き生きと笑ったり泣いた
りしてもつれあっていました。そして最後に
ビデオが暗転して、先生の「贈る言葉」が流
れたのです。
 卒業のお祝いの言葉、感謝の言葉、さらに
もっと一緒にいたいけれどお別れしなければ
ならないという優しい励ましの後、先生は、
「これから辛いこともたくさんあるでしょう。
一生懸命努力してても報われない、うまくい
かないこともたくさんあるでしょう。」と、
おっしゃって、そのような時にもこのクラス
の友達と過ごした楽しかった日を思い出して
これからも友達と助け合って、決してくじけ
ずに前を向いてがんばっていこうね、と、結
んだのでした。
 いかにも教師のお手本のような言葉なのだ
けれど、先生のいない教室で、子供たちは全
員で泣いたそうです。息子も泣きながら帰っ
てきました。後で私もそのビデオを見たので
すが先生の声も涙ぐんでいました。
 意地悪な私から見ればありふれた言葉です。
誰にでも言えそうな言葉です。けれども、こ
の年になって、どんなに努力してもうまくい
かないことが本当にたくさんあることを、誰
でも知っています。理不尽なことばかりです。
そのときに、当時の自分、子供らしい悩みは
あったものの、先生や親たちに見守られて、
同級生とわいわい楽しくやっていた頃の無邪
気な自分。それを思い出すことでどんなに癒
されることか。そして、現在もその同級生た
ちと他愛ない話をすることが、どんなに励み
になることか。同じ教室にいた同級生がどこ
かで同じように別々の苦労をしながら頑張っ
ていることをちょっと想像するだけでどんな
に元気が出ることか。そして、あの頃の無邪
気な自分と今の自分は、成長していても、純
粋な部分はどこかに残っていて、根っこは何
も変わっていないんですよ。
 息子たちにはまだ理解できないと思います。
でも、先生自身もそんな厳しい現実を実感し
ているからこそ、その言葉を入れてくれたん
だろうなあ、と、自分の今とも重ね合わせて、
しみじみ感謝しました。たった今、ここで独
りぼっちでも本当はそうじゃないんですね。

by akira_dai | 2017-02-17 09:49

AKIRAの日常、考えたこと、など。平凡です。